アレクサンダー・テクニークの会 ブログ

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アレクサンダー・テクニークとは、どんなもの? ②「その人全体」

 こんにちは、北村綾子です。
 アレクサンダー・テクニークとは、どんなもの? この課題は、アレクサンダー・テクニークを私が学び続ける上で、何度も考え整理をしておきたいことです。


 今、この課題を整理する上で、次に書き留めておきたいことは、アレクサンダー・テクニークは「その人の全体」に及ぶということです。

 

 わからない、うん、書いていて私もわかりにくいなあ、と思います(苦笑)。

 

 それは、創始者F.M.アレクサンダー氏の実験と観察を少しご紹介することで、少しは具体的に書くことができるのではないかと思います。

 

 F.M.アレクサンダー氏は俳優だったのですが、舞台の上で、声がでなくなるトラブルが起こってしまいます。その問題は医療機関に行っても解決できず、自分で解決しようと決心し、自分が声を出すとき何をしているか、鏡の前で観察を始めます。


 彼は自分が声を出すとき、首を固くし、①喉頭を押し下げ、②頭を後ろに下に、③あえぐように息を吸い込むことを見つけました。数カ月の観察と実験の結果、頭を後ろに下げることを防ぐことができれば、息の吸い込み、喉頭を押しつぶすことを間接的に防げることが分かりました。

 

 これがうまくできると、朗唱するあいだに、声が以前ほど、かすれなくなったのです。そして何度も繰り返すうちに、声のかすれが、どんどん軽減していったようです。


 ここでF.M.アレクサンダー氏は満足し観察と実験を止めるようなことは、しませんでした。彼は、俳優としてシェークスピアの朗唱を続けたかったのですね。だから、声がかすれる傾向を根絶したいという強い願いが、彼を動かしたのです。

 

 彼が考えたことは、意図的に、頭を前に出してしまえば、喉頭と呼吸器の働きをもっと良い状態にすることが、できるかもしれない。それによって、声がかすれる傾向を根絶できるかもしれない、ということでした。

 

 彼は朗唱をしながら頭を前へ出してみました。ある地点よりも前に出してしまうと、頭を前だけでなく、下にもさげる傾向があることに気がつきました。そうすると、喉頭はつぶれ呼吸は苦しくなりました。この実験は、頭が後ろに下にいっていたときと同じような結果になりました。

 

 長い観察と実験を繰り返すうちに彼がわかったことは、
喉頭をつぶすことになる頭と首との使い方は、どのようなものであれ、胸を持ち上げ、背丈を縮める傾向と関連していることに気づいたのです。

 ここで、朗唱するとき声がつぶれる問題は、頭と首の関係に関係するだけではなく、胴体にも関連していることを、彼は認めたのです。

 

 のちに、彼が発声を学んでいた頃からの癖、「朗唱をするぞ」と思うと、彼の全身に不必要な筋肉緊張が起こり、特に足のつま先は萎縮して下向きに折れ曲がっていたことに気づきました。

 ここで、朗唱するとき声がつぶれる問題は、頭と首の関係から胴体にも関連があり、全身の過緊張から、つま先の強い緊張までが関連することだったことに気がつきます。

 

 「声がつぶれる」という部分的問題が、全身と関連していたのです。そして「朗唱するぞ」という心の動きが、その緊張関係を強めていたことまでを見つけたのです。体全身の働きは、精神とも結びついていたのです。

 

 まさにF.M.アレクサンダー氏「その人全体」が、朗唱するときの声のつぶれを起こしていた、無意識に選んでいたことを見つけたのです。

 

 F.M.アレクサンダー氏は無意識に選んでいたことが、彼自身に有害であることを知り、意識的に「心とからだ全体」が協調できるように、より良い「からだの使い方」を選びとる方法を、実験と観察から導き出したのです。

 

 逆に言えばアレクサンダー・テクニークを学ぶためには、「その人全体」、その人の心とからだ全体が協調しようとする働きを妨げない、助けることで、より学ぶことができるのです。

 それでは、ここで終わります。ありがとうございました。