アレクサンダー・テクニークの会 ブログ

レッスンを始めました。レッスンのご案内、日々の気づきや、思うこと考えることを書きたいと思います。

運動とアレクサンダー・テクニーク

 健康維持・増進のため、または肩こりや腰痛改善のためエクササイズが推奨されています。
 アレクサンダー・テクニークは、健康維持・増進、または肩こりや腰痛改善のためにも役に立つ技術です。この運動について、創始者フレデリック マシアス アレクサンダー氏は、どんなこと言っているのか?
 興味深い内容なので、みてみてください。

 

 アレクサンダー・テクニーク創始者フレデリック マシアス アレクサンダーさんは、
「健康維持・増進のための運動、エクササイズについて、どうお考えですか?」という質問に対して、
 自分自身の身体の使い方に無自覚なまま運動をしても、百害あって一利なしだ、というふうなことを言ったという翻訳を読んだことがあります。

 私の覚えている内容が、一刀両断にエクササイズを否定しているようなニュアンスというわけではなくて、アレクサンダー氏というのは、結構そういうズバッと言ったり、書いたりする人だったように思います。

 これはアレクサンダー・テクニークを学ぶ人たちの間では、有名な内容なんですが、残念ながら、今すぐ原書を見つけることができません。すみません、私の整理が悪いんですが……。

 

 少し前に買ったアレクサンダー氏の直弟子、パトリック マクドナルドのメモやインタビューをまとめた本に、彼が同じようなことを尋ねられ、答えている文章があったので、引用してみると、

 「生徒たちはしばしば私に聞いてくる。『エクササイズってした方がいいですか? もしそうなら、どんなエクササイズを?」
 それに対して、マクドナルド氏は
 がむしゃらなエクササイズは現在の自分の(不完全な使い方の)協調作用をただ増幅するだけか、あるいは協調作用の欠落を増幅するだけであれう。不完全な協調作用の程度とエクササイズにどれだけ奮闘するかによって、結果の善し悪しを決定づけてしまう。それゆえ私はエクササイズをするのに最良なものは散歩だと勧めている。なぜなら誰でも特別な苦労もなくおこなえ、しかも十分な活動だからである。何より新鮮な空気よりいいものはない。協調作用が、十分にはたらいているからだは、日常生活における日常的な活動から十分な運動を引き出しているのである。

 なんてことが載っています。
 マクドナルド氏もアレクサンダー氏の意見を補足したような答をしています。

 

 振り返ってみると、
 アレクサンダー氏が生まれたのは、1869年1月。その年は、日本では慶応4年、1869年11月に明治元年になる年です。1955年(昭和30)に亡くなっています。
 また、直弟子の1人、パトリック マクドナルド氏は1910年(明治43)に生まれ、1991年(平成3)に亡くなっています。

 アレクサンダー氏が生まれた頃、オーストラリア、タスマニア島(北海道よりも少し小さな島らしい)には電灯もなければ、電車もない。10歳前後の頃に、蒸気機関車のレールが敷かれ走ったようなところです。
 同時期、日本では、もちろん電灯もないし、蒸気機関車もない。
 移動手段は、歩くこと、馬に乗ること。

 

 マクドナルド氏が生まれた1910年頃、電灯が普及し、クラシックカーのような車が作られ、1914年に第一次世界大戦が起こされた。
 作家アガサ・クリスティーは、アレクサンダー氏と同世代の人で、その作品に描かれる家族は、イギリスの上流から中産階級の人びと。その作品で描かれる貧しい人びとが、その当時の普通の人たち、庶民なのでしょう。

 馬車に乗ったり、汽車の1等車に乗るのは、資産家。普通の人たちは、混み混みの汽車か、徒歩で移動していた。そんな時代を、お二人とも生きてこられたのです。

 

 ところが、今では、私たち庶民の環境ですら激変しています。
 移動には、電車やバスは言うに及ばず、車は自家用車もありタクシーもあり、バイクもあり自転車も、電動自転車もあります。エレベーターやエスカレーターが、あちこちにあり、階段を上り下りしなくても移動できます。
 以前は、市場が開く日時が決まっていて、その日その場所へ行かなければいけなかったのに、毎日近所で買い物ができます。お店は、野菜、魚、肉、書籍、衣類雑貨など別々のお店しかなかったのが、今では1つの大きなスペース、ショッピングモールや百貨店に行けば、用が足ります。


 インターネットが普及して、どこにも行かないでも、ネット注文すれば、物品を届けてくれる時代になりました。

 図書館に行かなければいけない図書はパソコンで検索でき予約できます。なんならパソコンの前に座ったまま電子本を購入し読むことができます。

 

 私たちは、自分の身体を動かさなくても、いろんなことが出来てしまう環境にいるのです。
 ところが、私たち(の身体)は、たぶん2000年以上もほとんど変わらず、ホモ(ひと属)のサピエンスとも呼ばれる種なんだそうです。

 

 日常的に身体を動かさなくなったことに、弊害がないとは言い切れない、たいした知識もない私でも、思います。
 動くことは減ったけれど、テレビ、スマホやパソコン等々から、多量の宣伝、情報が流され、私たちは、それらを選ばなければいけないような状況です。
 何かを注文するなら、小さな文字を読まなければいけません。購入条件や、値段が微妙に違うものの中から選ばなければいけないんです。
 ああ、疲れる。

 

 だから、エクササイズというほどのことではないにしろ、テレビやスマホやパソコンから、目を離し、窓の外を見てみましょう。
 立ち上がって、左右の腕を交互に回してみると、それぞれの肩甲骨が動きます。感じますか。動かさないと、自分の身体の部分が動いていることが、わからないことが、あります。
 そして、自分の身体が自分でコントロールしにくくなったりします。

 

 健康維持・増進のためのエクササイズをしてもいいし、しなくてもいいと思う。
 ただ、自分の身体を自覚的に動かしてみることは、今の時代に必要なことのように思います。